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プロ棋士特集

プロ棋士1年目の最年少棋士仲邑菫VS強化学習1日目人工知能AQZ

最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ

2019年7月10日、ついにGLOBIS AQZの初手合いが行われました。

GLOBIS AQZとは、GLOBISという会社が開発を手がけ、日本棋院と産総研のサポートを得て強化中の囲碁人工知能です。

今回のイベントは、強化学習1日目のAIに対して、プロ1年目の若手棋士が挑戦するというものでした。

プロ1年目の棋士で選ばれたのは、仲邑菫初段です。

仲邑初段はつい3ヶ月前に、「黒嘉嘉七段」との新初段シリーズでプロ人生に幕を開いたばかり。

さらにこのイベントの前日には、田中智恵子四段に勝利し、プロ公式戦初勝利を収めましたね。
この時の相手である田中智恵子四段は、女流三大棋戦で決勝進出経験のある棋士で、そう簡単に勝てる相手ではありません。

プロデビューを飾った新人棋士と、強化学習わずか1日目のAI、非常に注目の集まる対局が開催されました。

最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZの結果と棋譜

仲邑菫初段とGLOBIS AQZの対局は、GLOBOS AQZの中押し勝ちとなりました。

GLOBIS AQZは強化学習1日目とは思えないほど巧妙な海回しで序盤から優位を築き、中盤も鮮やかな攻めで一気に勝負を決しました。

この対局の見どころ
  • 中盤左下のAQZによる強烈な攻めがキツかった
  • 優勢を意識したAQZが不自然な着手を連発するも仲邑初段仕留めきれず
  • AQZ、確実な打ち回しで反撃の芽を消し、勝ち切る


    棋譜再生

    開発者の山口さんによると、「AQZには1日目でも強くなるようなある方法によって強化学習を行なった。」とのことです。

    まさか1日目でプロを倒すほどの力をつけるなんて、AIは怖いですね。

    プロ1年目仲邑初段VS強化学習1日目AQZの勝負どころを解説

    それではざっくりと、今回の対局の見どころを流していきます。

    最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ序盤
    まずは序盤。
    仲邑菫初段は、10歳とは思えないほどじっくりした立ち上がりで相手を迎え撃ちます。この状況では黒が大幅にポイントをリードしているものの、白は手厚く構えて中盤以降の戦いでポイントを奪い返そうという狙いです。

    ただ、私はどちらかというと黒が好きです。
    黒は上辺以外はっきり生きていて、白は明確に攻める目標がないので、ちょっと打ち方が難しく感じます。

    最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ中盤の戦い
    白が下辺に打ち込んだあとの戦い。
    黒の攻め方が見事でした。
    AQZは無理やり白石を殺しに行くのではなく、相手のスペースを狭めつつ、柔らかく急所を捉えた手で身動きを封じる打ち方が良いですね。

    この時点で白の大石はかなりキツそうです。
    ここを黒に封鎖されると、自然と右辺の白模様が消えていくのが辛いです。

    最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ
    仲邑初段は工夫を凝らして、なんとかコウに持ち込むことに成功しました。
    とはいえ、こんなに大きなコウ材はなかなか見つからないですね。

    黒は負けてもさほど損がないので、私だったら本気で殺しにいくよりは、白に損コウを打たせることと、ある程度の得ができれば良いと考えます。

    最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ
    仲邑菫初段が選択したのは上辺とのフリカワリでした。
    ここを殺すことができれば、さすがに白の方が大きいです。

    しかしAQZはこの石は死なないと見て、コウを解消。
    白はこれから上辺の石をかなり厳しく攻めなければいけません。

    最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ
    AQZが放った妙手(?)
    解説の大橋先生によると「おかしな手。白番の仲邑初段にチャンスがやってきました」ということです。

    相手の手がパッと見で悪い手だとわかることはよくあっても、具体的にどのように反発すれば良いのか、考えてみると難しいことってよくありますよね。

    今回の対局は持ち時間が少なく、この時1手60秒の秒読みだった仲邑初段もはっきりと読み切れることはできなかったかもしれません。

    最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ
    先ほどの黒石をうまく捨て石にして、黒は生きてしまいました。
    ここが生きると地合いではっきり黒が優勢です。

    白に残された狙いは残りわずか。
    強化学習1日目というAQZの弱みをついて、なんとか盤面を紛らわせていくしかありません。

    最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ
    最後の狙いだった中央の薄みをしっかりと補強され、黒の勝ちは動きません。
    盤面で10目強、黒が優勢です。

    AQZは強化学習1日目にして、若干終盤の荒さが残るものの、プロ棋士相手に堂々たる打ち回しを見せてくれました。

    両者の今後の成長にも期待がかかりますね。

    GLOBIS(グロービス)AQZとは

    GLOBIS(グロービス)AQZとは、GLOBISという会社がか開発を行なっている、日本のAIです。

    GLOBISは以前から囲碁界と関わってきて、「グロービス杯世界囲碁U-20」という有名な若手棋戦を作っています。

    GLOBIS代表の堀さんは次のように話しています。

    昨年9月、中国・深圳にあるテンセントのAIラボを訪問し、「Alpha Go」引退後、囲碁AIの国際大会で優勝を重ねている「絶芸(Fine Art)」の開発チームと面談しました。絶芸の開発は5名体制で、テンセントでは2年前まで囲碁AIに関する知見がほとんど無い中、Alpha Goの論文を元に開発を進めたということを知り、グロービスでも世界トップレベルの囲碁AI開発は可能だと考えました。これまでグロービス杯世界囲碁U-20を通して取り組んできた囲碁の若手棋士育成を加速させ、グロービスのAI事業を発展させていくため、そして日本のAI能力を高めるためにも、囲碁AI開発に挑戦することを決めました。山口祐さん、トリプルアイズさん、日本棋院、産総研さん、東大・松尾研の協力の下、「GLOBIS-AQZ」の開発を進め、世界一を目指したいと思います。そして、「GLOBIS-AQZ」を用いて若手棋士の育成に貢献してまいります。
    GLOBISホームページより引用

    GLOBIS AQZの特徴は、産総研の大規模計算資源であるAI橋渡しクラウド「ABCI」という世界でも指折りのスーパーコンピューターを利用して強化学習を行なっていることです。

    現在の世界最強AIは中国の騰訊が開発している「絶芸」ですが、GLOBISはこの絶芸を倒して世界一になると目標を掲げています。

    というのも、中国の絶芸は、中国ナショナルチームの一部の棋士にしか使わせてもらえないんです。
    日本の棋士は絶芸による検討、練習ができないため、中国と比べてトレーニング環境が大きく劣っていると言われています。

    そのため日本棋院はAIの強化によって若手育成の環境を整え、日本囲碁界を復活させたいとしています。

    今回の対局でAQZの実力は高く評価され、今後の可能性も大きく期待されています。

    ぜひ日本のAIが中国を倒して、今後の囲碁界を変えていってほしいですね。

    来週には「芝野虎丸七段」が強化学習7日目のAQZと対局することになっています。
    こちらも非常に注目が集まりますね。

    対局は幽玄の間、AbemaTVから観れます。

    以上、「最年少プロ囲碁棋士仲村すみれ初段VSグロービスAQZ」でした!

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    yuki
    名前:yuki 日々研究に追われる理系大学生。専門は脳科学。 趣味は囲碁と中国語。 性格はおだやかで人懐っこいと言われる。 詳しい自己紹介はyukiのプロフィールをご覧ください。
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